オゾン用語集 -オゾン基礎情報

オゾンとは酸素原子が3個結合した物質で、気体の酸素、または空気などの酸素含有気体から生成することができます。

常温常圧(室内)では気体の状態で存在し、特有の臭気(オゾン臭)がします。強力な酸化作用(oxidization)があり、様々な用途を持ちます。オゾンの濃度は[ppm]または[g/m³]という単位が用いられます。オゾンガスは自然界にも存在しており、その濃度は0.01~0.1ppm程度です。

オゾンの発生方式

オゾンの発生方法としては紫外線式電気分解式及び放電式の3種類が実用化されています。
この中で、放電式はさらに沿面放電コロナ放電無声放電の種類があり、当社製品もこちらの放電式が主体となっています。

オゾンの分解方法

オゾンの分解方法は、熱分解法薬液分解法活性炭法触媒法紫外線法の5種類が代表的な方法です。ただし、オゾンは不安定な物質のため、特別な分解方法を取らずとも、時間をかければ自然に分解し酸素へ変わります。

また、オゾンの分解を応用した、促進酸化という方法がございます。ある物質に対して酸化処理を行う際に、オゾンのみでは十分な酸化が達成されない場合、あるいは酸化が達成されても実用上十分な酸化速度が得られない場合に用いられます。

オゾンは、通常の状態では殆ど無色透明に近い物質であり、その濃度を測定するためには特殊な方法を用います。オゾン濃度を測定する方法には、紫外線吸光法半導体薄膜式法隔膜式ポーラログラフ法色素による検知管法ヨウ素滴定法(ヨウ化カリウム法)の5種類が代表的です。

オゾンに関する協会・組織

主要な協会としては、日本オゾン協会および日本・医療環境オゾン学会などがございます。当協会には、弊社も加入しております。エコデザイン株式会社は、オゾンに関する物理・化学両面からの基礎研究により独自の技術を確立し、産業用及び研究開発用のオゾン発生器、オゾン水生成装置を主力に製品開発の実績を積み重ねてきた会社です。

 

オゾン発生方式(放電式、紫外線式、電気分解式)

オゾンの発生方法として放電式、紫外線式、電気分解式の3種類が実用化されてます。

放電式には主に3つの方式があり、無声放電式、沿面放電式、コロナ放電式があります。種類により、大小様々なオゾン発生能力を持っており、産業用途として最も一般的な方式です。当社製品もこちらの放電式が主体となっています。

紫外線式はオゾンの発生効率及び発生量が低いですが、小型低電力であり、空気殺菌、空気脱臭、小規模の水の殺菌等に用いられています。

電気分解式は水を電気分解することでオゾン水を生成しています。主にオゾン水の生成用として用いられています。

 

放電式

酸素に対し、強いエネルギーを与えると、酸素分子(O₂)が酸素原子(O)2つに別れます。この後分離した酸素原子は再び結合して酸素分子(O₂)に戻ります。この際、一部の酸素原子(O)が酸素分子(O₂)と結合することでオゾン(O₃)ができます。酸素へのエネルギー供与に放電を用いるのが放電式オゾン発生器の基本原理です。最も効率的にオゾンを生成できる方式ですので、産業用に広く使用されています。

放電のやり方により、いくつかの方式があります。放電を行うための部品を「放電体」、高圧電気を作り出す部品を「高圧電源」と呼びます。様々な利点を持ちますが、空気を原料にオゾンを生成すると、副産物として窒素酸化物(NOx)ができてしまう欠点があります。

 

沿面放電

沿面放電とは、物の表面を伝わって電流が流れる形態の放電現象です。この方式では、円筒もしくは平板状のセラミック、ガラスなどの誘電体の一面を面状の導電性物質(面状電極)にて覆い、他面に線状の導電性物質(線状電極)を配置した放電体を用います。それら面状電極と線状電極の間に交流高電圧を付加して、放電体の表面上にオゾンを生成します。

安価で小型であることが特徴です。しかし、その分耐久性が低く、またオゾン発生量が少ないです。簡易的なオゾン発生器に用いられます。

メリット

安価。小型。お手軽。

デメリット

劣化しやすい。オゾン発生量が少ない。

主な用途

比較的小型のオゾン発生器に用いられることが多いです。

 

コロナ放電

針状の電極を空中に配置して高圧の電気をかけると、その針の先端周辺に気中放電が起こります。この際、周囲を暗くするとその電極の周辺にコロナ(王冠)状の光が見えるため、コロナ放電と呼ばれています。作成が簡単であり小型化できる反面オゾン発生量は多くないため、小型のオゾン発生器や、装置組み込みのオゾン発生器として利用されています。

メリット

安価。小型。お手軽。

デメリット

オゾン発生量が少ない。

主な用途

小型のオゾン発生器や、装置組み込みのオゾン発生器に用いられることが多いです。

 

無声放電

オゾン発生に用いられる代表的な放電形式です。板状の誘電体と金属、もしくは誘電体と誘電体を一定の間隔(放電ギャップとよばれ通常0.1~10mm程度)で配置し、その間に交流電圧を印加して放電を発生させます。このような方法により発生する放電は火花放電のような音を伴わないために無声放電と言われます。

オゾン発生効率が高く、装置の大型化も可能であるため、産業用途として最も広く利用されています。弊社のオゾン発生器も無声放電式を用いています。

メリット

オゾン発生効率が良い。大型化可能。

デメリット

高価。

主な用途

産業用途のオゾン発生器に用いられることが多いです。

 

紫外線式

地球のオゾン層が作られているのと同様、酸素に紫外線をあてる事でオゾンを生成する方式です。酸素分子を紫外線のエネルギーにより酸素原子に分解すると、再結合の際に一部がオゾンとなります。オゾン生成には、波長185nm付近の紫外線を用いることが一般的です。 紫外線ランプとして、水銀ランプやエキシマランプを利用します。

比較的簡単に利用できるため、小型の脱臭、殺菌装置に用いる場合が多いです。また、放電式で問題となる窒素酸化物の発生が少ない利点があります。ただし、オゾン発生効率が悪く、大型化には向きません。

メリット

比較的小型。窒素酸化物の発生が少ない。

デメリット

オゾン発生効率が悪い。

主な用途

小型の脱臭、殺菌装置に用いられることが多いです。

 

電解式

水(H₂O)を電気分解する際に、酸素(O₂)と合わせてオゾン(O₃)を生成する方式です。オゾン発生原料が水となりますため、原料ガス不要となる利点があります。

生成原理上オゾンガスが水に溶け込む形となりますため、オゾン水の生成を行う事もできます。しかしながら、放電式に比べてオゾン発生効率が悪い他、水と混ざる事が欠点にもなります。この他、オゾン生成時に水素(H₂)が副産物として発生してしまいます。

メリット

原料ガスが不要。オゾン水をお手軽に生成可能。

デメリット

オゾン発生効率が悪い。水が混ざる。水素が発生する。

主な用途

小型~中型のオゾン水生成装置に用いられることが多いです。

 

オゾン分解方法(熱分解法、薬液分解法、活性炭法、触媒法、紫外線法)

オゾンは化学的に不安定な物質ですので、時間をかけるだけでも自然分解し酸素へ変わります。ただし、産業用途としてオゾンを利用するには、時間をかけずにオゾンを分解する必要もあります。この際に使用するのがオゾン分解器です。

オゾン分解の方法は、熱分解法・薬液洗浄法・活性炭法・触媒法・紫外線法の5種類が代表的な方法です。一般的には、1ppm以下の低濃度域であれば活性炭を使用し、高濃度域の場合は触媒式が適しています。

 

熱分解法

オゾンガスを350~450℃の雰囲気に1~2秒間さらす事でオゾンを分解除去できます。オゾンガスの分解速度は80~100℃付近から急速に早まりますので、加熱時間を取れるようであれば、より低温でも実施可能です。確実な分解方式となりますが、エネルギーコストが大きく、一般的には利用されません。

メリット

確実。

デメリット

エネルギー効率が悪い。一般的な用途では、産業的実用性が低い。

主な用途

主に実験用途で用いられることがあります。応用として、真空導入用途でも使われます。

 

薬液分解法

オゾンガスを薬液を通過させることにより、化学反応でオゾンを除去できます。反応後の薬液を処理する必要があり、また薬液コストもかかるため、一般的には利用されません。適応できる薬液には主に下記のものがあります。

・アルカリ液
アルカリ液中で水中オゾンの半減期が短くなる事を利用します。オゾンの薬液への溶解速度が問題となり、完全なオゾン除去は困難です。

・チオ硫酸ナトリウム
チオ硫酸ナトリウム(ハイポ)がオゾンを還元することを利用してます。
アルカリ液に比して除去効率は高くなります。実験室等で用いられる事があります。

・過酸化水素
過酸化水素はオゾンを触媒的に分解します。純水中にわずかに含まれる過酸化水素が、オゾン水濃度低下の原因となることもあります。
後述の促進酸化法にも使用されています。

メリット

工程の中で薬液を上手く転用できる可能性がある。

デメリット

オゾン分解目的のみではコストパフォーマンス性が悪く、実用的ではない。

主な用途

主に実験用途で用いられることがあります。応用として、促進酸化用途でも利用されます。

 

活性炭法

オゾンを活性炭(C)との反応、および活性炭の吸着効果で除去する方法です。オゾンガスを非常に効率良く除去できます。活性炭に吸着したオゾンガスはそのまま炭素と反応するか自己分解するため、目詰まりはおこりません。

空気中、水中を問わずオゾンガスを分解できるのが特徴です。ただし、空気中のオゾンガスを分解する場合、対象となる廃オゾンの濃度が高いと、分解反応熱により活性炭が発火する事があります。この弱点を解決するため、難燃性の工夫を施した活性炭もあります。

メリット

オゾンガス、オゾン水ともに利用可能。コストパフォーマンス性が良い。

デメリット

分解反応熱が発生する。特に高濃度のオゾンガスの場合は発火する恐れがある。

主な用途

多くの産業用途で用いられます。

 

触媒法

オゾンガスを二酸化マンガン、酸化ニッケル等の触媒を充填した充填層に通過させる事で、オゾンを除去する方法です。低濃度~高濃度まで幅広いオゾンを分解可能であり、弊社では、基本的にこの触媒方式を第一選択としています。触媒は難燃性のため発火の恐れがなく、さらに触媒自体は消耗しないので長期間にわたり使用できます。

触媒は、顆粒状のものが一般的ですが、ハニカム状に成形したものもあります。ハニカム式のオゾン分解触媒は大流量低濃度のオゾンを除去するのに適します。

欠点として、水に濡れると触媒活性が失われますので、オゾン水の分解には使用できません。また、触媒は長期間の運用が可能ですが、塩素ガス等の触媒毒にさらされると、分解性能が低下します。また、長時間高温にさらされると触媒担体が損壊し使用できなくなります。

オゾンガスは分解時に分解熱を発生するため、その点にも注意が必要です。

メリット

高濃度のオゾンガスを分解可能。発火リスクが非常に低い。物持ちが良い。

デメリット

水に濡れると効果が失われる(オゾン水不可)。高温の分解反応熱が発生する。塩素ガスに弱い。

主な用途

オゾンガス分解用途限定で、多くの産業用途で用いられます。

 

紫外線法

紫外線の波長にはオゾンを発生する波長(185nm付近)とオゾンを分解する波長(254nm付近)があり、その分解波長を利用してオゾン分解を行います。

気相・液相両方で使用可能ですが、光が届かないところは分解できません。特に液相において、色のついた水は光が通らないため分解できません。光による分解ですので、オゾン分解時に不純物が混ざらない利点があります。一方、分解効率は悪く、分解器も高額になりがちです。

メリット

不純物が混ざらない。オゾンガス・オゾン水ともに利用可能。

デメリット

光が届かない箇所は分解不可。分解効率が悪い。高額。

主な用途

一部の特殊用途に用いられます。応用として、促進酸化用途でも利用されます。

 

応用-促進酸化

促進酸化「AOP(advanced oxidation process)」は、「何らかの手段で従来に比して酸化作用を高めて酸化処理を行う方法」です。促進酸化は、オゾン単独では処理できない難分解性物質を分解する際に用いる手法となります。

オゾン(O₃)による酸化反応は、オゾン自体の酸化作用の他に、オゾンから二次的に生成される物質も寄与しています。この際に重要となるのが、オゾンと水が反応してできるヒドロキシラジカル(・OH)です。ヒドロキシラジカルはオゾン以上の反応性を持っており、オゾンでは分解できない物質も分解することができます。オゾンによる促進酸化は、オゾンからヒドロキシラジカルを効率的に生成するための方式となります。

ヒドロキシラジカルはオゾンが自己分解する際に生成しますので、オゾン促進酸化方式は、オゾン分解促進の方式となります。代表的に方法には下記があります。

CHECK

促進酸化の代表的方法

・加熱
・紫外線
・薬液(アルカリ溶液、過酸化水素等)
・光触媒

  

オゾン濃度測定方法

オゾンは、通常の状態ではほとんど無色透明に近い物質であり、その濃度を測定するためには特殊な方法を用います。オゾン濃度を測定する方法には以下の5種類が代表的です。

 

紫外線吸光法(オゾンガス、オゾン水)

オゾンは波長254nm付近に紫外線の吸光ピークを持ちます。紫外線の吸光量はオゾン濃度に比例して増加しますので(ランベルト・ベールの法則)、この吸光量からオゾン濃度を算出いたします。最も代表的な濃度測定方式となります。

精度が高く、空気や水は波長254nm付近に吸光ピークを持ちませんので、空気(酸素)中、水中を問わずオゾン濃度を測定できます。測定対象に上記波長を吸収する物質(夾雑物)が含まれていると測定が困難になります。特に、一部の有機溶媒や塩素化合物は、吸光ピークが被るので注意が必要です。

弊社製のオゾン濃度計もこの方式であり、紫外線ランプにLED式のものを採用しているのが特徴です。

メリット

精度が高い。空気中、水中を問わず測定可能。

デメリット

ノイズの影響を受けやすい。有機溶媒や塩素化合物は吸光ピークが被る。高価。

主な用途

特に精度を必要とする、多くの用途。

 

半導体薄膜式法(オゾンガス)

半導体の薄膜にオゾンが触れると、半導体表面の抵抗値が変化します。この変化量からオゾン濃度を算出いたします。測定装置を小さくすることができるため、装置組み込み用のセンサーとして用いられる事があります。

空気中で低濃度のオゾンを監視するのに向きます。ただし、外的な影響を受けやすいため、厳密な精度を求める測定には向きません。

メリット

サイズが小さい。組込用センサーとして最適。

デメリット

ノイズの影響を受けやすい。精度が低い。

主な用途

空気中の、低濃度のオゾンを監視する用途。組込用センサー。

 

隔膜式ポーラログラフ法(オゾン水)

水中のオゾン濃度を測定するための方式となります。電解液に浸された作用電極/対電極において、オゾンが入り込むと酸化/還元反応が起こります。この際電極間でオゾン濃度に比例した電流が発生しますので、オゾン濃度を算出できます。水中から「隔膜」を通してオゾンガスを透過し測定を行うため、隔膜ポーラログラフ式と呼ばれます。

水中からオゾンのみを取り出せるため、夾雑物の影響を受けにくい利点があります。定期的に隔膜、電解液を交換する必要がある点が欠点です。

メリット

夾雑物の入った水にも使用可能。汚れに強い。

デメリット

定期的なメンテナンスが必要。水中のみ使用可能。高価。

主な用途

排水、養殖など、夾雑物の多いオゾン水に対する測定用途。

 

色素による検知管法(オゾンガス)

ガラス管へインディゴ染料など、オゾンと反応する色素を層状に詰め入れ、試料を固定、密閉します。
測定の際に封の一部分を破り、一定量の気体(100ccが目安)を一定の速度で流し入れ、変色後の試料の長さによって濃度を測定する方法です。

測定精度は高くありませんが、比較的機器が安く、簡単に測定できることが利点です。

メリット

圧倒的なお手軽さ。安価。

デメリット

測定精度が低い。測定器具は使い捨て。

主な用途

あらゆる分野での簡易測定。

 

ヨウ素滴定法(ヨウ化カリウム法) (オゾンガス、オゾン水)

ヨウ化カリウム(KI)はオゾンと反応するとヨウ素(I₂)が遊離します。この際のヨウ素遊離量はオゾン量に比例します。遊離したヨウ素の量をチオ硫酸ナトリウムで滴定することにより、オゾン濃度を算出いたします。

オゾンガス、オゾン水双方の濃度を測定できますが、オゾンガスの分析は操作が煩雑となります。弊社では、オゾン水濃度の測定に利用することが多いです。

メリット

化学分析なので、非常に高精度。オゾンガス、オゾン水ともに測定可能。

デメリット

操作が煩雑。多くの試薬の用意が必要。

主な用途

精密測定。

 

オゾンに関する協会・組織

日本オゾン協会

特定非営利活動法人(NPO法人)として、オゾン技術に関する講習会や年次研究講演会、オゾン安全管理士の認定制度等を管理運営しています。また、国際オゾン協会とも連携しながら常に最新のオゾンに関する情報を提供しています。

法人会員には主に、オゾン発生装置メーカー、オゾン関係プラントメーカーなどの企業が参加しています。特別法人会員として、水道事業体、公益法人、また、個人会員には、学識経験者(大学、研究機関)をはじめとした方々が参加しています。

 

日本医療・環境オゾン学会

オゾンの疾病治療と予防医学などへの応用、オゾンによる清浄・快適環境の創造、及びオゾン利用の安全性についての研究を通して、適切なオゾン利用の普及を活動目的としています。臨床研究部会・環境応用部会/オゾン水研究会・獣医部会・歯科部会・基礎研究部会の5つの部会が活動しています。

法人会員には主に、オゾン発生装置メーカー、化学、製薬、環境などの企業の他、病院、医療分野の団体が参加しています。

 

エコデザイン株式会社

産業用及び研究開発用のオゾン発生器、オゾン水生成装置の製造を主力とし、曝露試験機器、オゾン濃度測定器、オゾン分解器、PSA酸素濃縮器、オゾン化油の製造も手掛けています。
また、オゾン関連の受託試験サービスや、上記製品のレンタル事業も展開しています。
2000年の創業から20年以上の間、埼玉県小川町を基盤とし、オゾンに関する物理・化学両面からの基礎研究により独自の技術を確立し、製品開発の実績を積み重ねてきた会社です。

 

参考文献について

参考文献については下記ページをご参照ください。おすすめの書籍としてご紹介しております。

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