オゾン用語集 -耐久試験

ここでは、各材料のオゾン耐性や、オゾン耐性確認のための試験について説明します。

概要

オゾンは非常に高い酸化力を持つ物質であり、多くの物質を酸化劣化させます。自然界にも極微量のオゾンガスが存在しており(0.001~0.01ppm程度)、環境におけるゴム劣化の原因となっております。

オゾンによる酸化に対する強さは耐オゾン性と呼ばれています。耐オゾン性には幅があり、低濃度のみ耐性があるもの、高濃度にも耐性があるもの双方がございます。

ゴムの耐オゾン性を試験するオゾン耐久試験は、複数のJIS規格で規定されています。
ゴムは一般にオゾンガスに弱いものが多く、ゴムに生じる亀裂(クラック)を観察してオゾン劣化の進行速度を調べるためのJIS規格がございます。

オゾン劣化試験の中には印刷物や塗装の色落ち確認試験なども含まれており、こちらもJIS規格で規定されています。

 

オゾン耐久試験に関するJIS規格

また、劣化速度を高めたシミュレーションを行う加速試験もあります。この試験では、サンプルの使用環境でのオゾン濃度と、使用期間の積「CT値(Concentration×Time)」に合うよう、オゾン濃度と期間を設定してオゾン曝露試験を実施します。

サンプルに対するオゾン暴露試験においては、状況に応じて下記の値を設定します。

オゾン曝露試験の設定項目
  • オゾン濃度:高いほど劣化しやすくなります。
  • オゾン処理時間:長いほど劣化しやすくなります。
  • 処理温度:一般的に、高いほど劣化しやすくなります。
  • 処理湿度:一般的に、高いほど劣化しやすくなります。
  • サンプルへ与える物理的な負荷量
  • サンプルへ与えるオゾンガスの風量

 

JIS K 6259-1

「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの静的オゾン劣化試験及び動的オゾン劣化試験による耐オゾン性の求め方」について規定しているJIS規格です。環境中におけるゴムのオゾン耐性を確認する際に実施する試験となります。

静的オゾン劣化試験とは、規定の静的引張ひずみを与えた試験片を、規定の温度及び規定のオゾン濃度の試験槽内で曝露する試験です。この際、規定の時間ごとにゴムの亀裂を観察して、耐オゾン性を求めます。詳しくは、「静的オゾン劣化試験」の項をご参照ください。

一方、動的オゾン劣化試験とは、規定の引張ひずみを与えた試験片に、さらに往復運動の動的引張ひずみを与える試験となります。このひずみを与えながら規定の温度及び規定のオゾン濃度での曝露を行います。常に動的なひずみを与える場合と、静的と動的を交互に繰り返す場合の2種類の試験がございます。詳しくは、「動的オゾン劣化試験」の項をご参照ください。

 

JIS K 6259-2

加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの耐オゾン性確認試験に際し、オゾン濃度の求め方についての規格となります。オゾン濃度の求め方は、下記三種類が規定されています。

濃度測定法

A.「紫外線吸光法」
B.「計器法」(電気化学的方法、化学発光法)
C.「湿式化学法」(よう素、修正よう素法、定電流電解法)

ほとんどの場合、試験に用いられるのは紫外線吸光法です。
紫外線吸光法は精度が高く、測定が簡便であり、かつリアルタイム測定も簡単です。

弊社でのオゾン曝露試験でも、原則として紫外線吸光法を用いています。

 

JIS K 6330-7

ゴム及びプラスチックホースに関連する、静的条件下での耐オゾン性評価を規定したJIS規格です。この規格では、気体オゾンを連続時間曝露させた時の、ホース外面層のオゾン劣化を測定します。

ホース内径や形状、採取する試験片の種類に応じて、以下5種類の方法に分類して規定しています。

オゾン曝露試験の設定項目

A法:内径が25 mm以下のホースに適用し、ホース形状の試験片で行う。
B法:内径が25 mmを超えるホースに適用し、ホースから採取した試験片で行う。
C法:内径が25 mmを超えるホースに適用し、ホースの外面層から採取した試験片で行う。
D法:内径に関係なく、ホース形状の試験片で行う。
E法:内径に関係なく、繊維補強ホースのような拡管可能なホースに適用し、ホース形状の試験片で行う。

環境中におけるホースのオゾン耐性を確認する際に実施する試験となります。

 

JIS L 0890

染色した繊維製品のオゾンに対する「染色堅ろう度」(染料などで染色された生地の染色の丈夫さ・抵抗性、いわゆる「色の変わりにくさ」や「色落ちのしにくさ」)試験方法について規定したJIS規格です。

具体的な試験方法としては、低湿条件(30℃±5℃・相対湿度 65%以下)、又は高湿条件(40℃±5℃・相対湿度85±5%)の雰囲気で、規定のオゾン曝露試験を実施します。

曝露後、試験片を変退色用グレースケール(目視による判定で用いる基準物)と比較するか、又は測色計によって変退色等級(5級~1級の9段階評価となり、数値が大きいほど染色に対して堅ろう性が優れている)を求め、オゾン堅ろう度を判定します。

 

静的オゾン劣化試験

加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの耐オゾン性の求め方について規定したJIS規格「JIS K 6259-1」において採用されている試験方法です。この試験では、試験片に対して静的な引張ひずみを与えながら規定濃度のオゾンガスを曝露します。その後、ゴムの亀裂状態及び亀裂発生までの時間を評価して、耐オゾン性を求めます。

静的な引張ひずみでは、ゴム試験片を専用の伸張治具で引き伸ばして固定し、ひずみを与えます。

試験後の亀裂観察には、適切な光源の下で5倍〜10倍の拡大鏡を用います。試験中に亀裂観察を行う場合は、試験槽の観察窓に取り付けた拡大鏡によって行います。この他、試験片を伸長治具に取り付けたまま試験槽から取り出して、できるだけ短い時間で観察を行う方法もあります。

 

動的オゾン劣化試験

加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの耐オゾン性の求め方について規定したJIS規格「JIS K 6259-1」において採用されている試験方法です。この試験では、試験片に対して動的な引張ひずみを与えながら規定濃度のオゾンガスを曝露します。

試験片は、それぞれ、引張ひずみがない状態(引張ひずみ0%)で引張装置に取り付け、往復運動を行ったとき、最大引張ひずみが選択した引張ひずみを与えるように、つかみ具を調整します。試験片を試験槽内に設置した後、引張装置を動かし、規定の試験条件を維持します。

動的オゾン劣化試験にはさらに、1.連続的方法および2.断続的方法があり、
1.連続的方法は、動的な引張ひずみだけを与える試験方法で、
2.断続的方法は、動的な引張ひずみと静的な引張ひずみとを交互に与える試験方法です。

 

クラック

ゴムやプラスチックなどのポリマー材料が、オゾンのような酸化力の強い気体にさらされると、ポリマー鎖(モノマー同士が共有結合により連結した部分)の切断が起こります。次に、ポリマー鎖の切断が起こると、ポリマーは劣化し、強度や柔軟性の低下が起こります。さらに柔軟性が低下すると、ポリマー表面が硬化し、応力に耐えきれなくなると「ひび割れ」が生じます。

このひび割れをクラックと呼びます。ポリマーの切断だけではなく、逆にオゾン酸化による架橋(モノマー同士の結合)によってもクラックが発生する場合があります。

クラックが発生した素材はもともとの機能を果たせなくなります。このため、クラックの発生はオゾン劣化を示す代表的な指標となります。

 

耐オゾン性

耐オゾン性とは、ある材料がオゾンに曝露された際に、その形状や機能を失わない性質のことを示します。耐オゾン性のある材料は、オゾンを使用するような環境下でも利用することが出来ます。一方、耐オゾン性のない材料は、材料のクラックや、サビなどが生じ、その機能を失う恐れがあるため、オゾンを使用する際は注意が必要です。

 

一般的に高い耐オゾン性を示す材料には下記があります。これらの素材であれば、100g/m³以上の高濃度オゾンガスにさらしても強度を失いません。

金属ステンレス(SUS316)、アルミ(アルマイト加工)、チタン、金
※ステンレスは場合により錆びる可能性あり
樹脂フッ素樹脂(PTFE、PFA)、硬質塩ビ(PVC)
※硬質塩ビは表面脱色の可能性あり
無機材料ほとんどのガラス
ゴム類フッ素ゴム(FFKM、カルレッツ©
※FFKMは長時間の使用により劣化する可能性あり

 

比較的高いオゾン耐性を示す材料には下記があります。ppmオーダーの低濃度オゾンガスであれば、強度を失いません。

金属ステンレス(SUS304、SUS403)、各種メッキ金属
樹脂高密度ポリエチレン(PE)、軟質塩ビ、アクリル
ゴム類フッ素ゴム(FKM)、シリコンゴム、エチレンゴム(EPDM)

 

オゾン耐性が無い材料には下記があります。低濃度のオゾンであっても、劣化するおそれがあります。

金属鉄、銅、銀、亜鉛等多くの金属
樹脂ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)
ゴム類ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム

 

CT値

「Concentration-Time Value」の略で、曝露量を意味し、オゾン濃度と曝露時間の積から算出されます。このCT値が同一であれば、オゾンによる作用も大まかに一致いたします。オゾン曝露の加速試験を行う場合には、このCT値に基づいてオゾン濃度/オゾン曝露時間を決定します。

一般にはConcentrationには「ppm」を、Timeには「min」を用いる場合が多いです。

例:
オゾン濃度100ppm × 処理時間 60min = CT値6000(ppm・min)
オゾン濃度 10ppm × 処理時間600min = CT値6000(ppm・min)

ただし、同じCT値であれば、オゾン濃度が高いほど、劣化度合いが大きくなりがちです。

 

参考文献について

参考文献については下記ページをご参照ください。おすすめの書籍としてご紹介しております。

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