私たちの日常生活の周辺には、数多くの細菌や真菌、ウイルスが存在し、感染症、腐敗、食中毒等の疾患や健康状態への悪影響、体調不良の原因となっています。
中でも有名なものが、依然として感染症例が相次いでいる新型コロナウイルスです。
HACCP
「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略で、「危害要因分析重要管理点」と訳されます。
食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因を把握した上で、製品の安全性を確保するための手法となります。
具体的には、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、危害要因を把握し、それを除去又は低減させるため工程を用意、管理するというものです。
作業環境許容濃度(オゾンの場合)
オゾンには、人体に対する有毒性がありますため、許容濃度が定められています。日本産業衛生学会にて作業環境許容濃度を定めています。
ここでの作業環境とは、労働者が1日8時間、1週間40時間程度、肉体的に激しくない労働強度となります。また、暴露濃度は、上記環境中での平均曝露濃度がこの数値以下となることを基準にしています。この作業環境許容濃度以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断されております。
日本産業衛生学会では作業環境基準としてのオゾン許容濃度を0.1ppm(0.2 mg/m³)と定めています。
CT値(除菌能力)
「Concentration-Time Value」の略で、オゾンなどの物質が菌やウイルスを不活化する(増殖できなくする)力を表すときの評価指標で、オゾン濃度(ppm)と曝露時間(min)の積から算出されます。この値が大きいほどオゾンと空気中の物質の接触量が多い事を示し、消臭・除菌効果も大きくなります。
オゾン発生器を使う際は、効果が十分得られるようにCT値に基づいて運転時間を定めることが大切です。
非加熱殺菌
食品等の材料の温度変化を伴わない殺菌となります。一般的な殺菌は加熱を伴いますため、対象となる食材や、素材が熱により変質することがあります。
これに対し、非加熱殺菌は加熱を伴いませんので、影響が少なくなります。非加熱殺菌には、紫外線、放射線、パルス状マイクロ波、超高圧、薬剤殺菌等があります。
オゾンも非加熱殺菌を行うことができ、殺菌効果を得た後に、残留物が残りにくいという利点があります。
コロナウイルス
由来としては、形態が王冠「crown」に似ていることから、ギリシャ語で王冠を意味する「corona」という名前が付けられました。
電子顕微鏡で観察されるコロナウイルスは、直径約100nmの球形で、表面には突起が見られます。ウイルス学的には、ニドウイルス目・コロナウイルス亜科・コロナウイルス科と分類され、遺伝情報としてRNAをもつRNAウイルスの一種(一本鎖RNAウイルス)です。殻の外側に膜を持つエンベロープウイルスに分類されます。
エンベロープウイルス
殻の外側に膜(エンベロープ)を持っているウイルスの総称です。コロナウイルスや、インフルエンザウイルス等、多くのウイルスがエンベロープウイルスに属します。この膜は、動物の細胞と同じ脂質二重膜でできており、ウイルスの感染能力にも関わっています。消毒剤に対する抵抗性は後述のノンエンベロープウイルスよりも弱く、オゾンへの抵抗性も低いです。
ノンエンベロープウイルス
殻の外側に膜(エンベロープ)を「持たない」ウイルスの総称です。ノロウイルスや、アデノウイルスがノンエンベロープウイルスに属します。消毒剤に対して高い抵抗性を持っているものが多く、アルコールも効きにくいです。
オゾンに対しても比較的高い耐性を持っておりますため、不活化に必要なオゾン量は、エンベロープより多くなります。
グラム陰性菌
デンマークの学者ハンス・グラムによって考案されたグラム染色により、赤色あるいは桃色に染色される細菌の総称です。細胞膜を覆うペプチドグリカン層が薄く、比較的オゾンへの耐性が低い場合が多いです。
大腸菌、コレラ菌、腸炎ビブリオ菌などが該当します。メタン菌に代表される古細菌もグラム染色陰性ですが、他の細菌類とは全く異なる性質を持ちます。
グラム陽性菌
デンマークの学者ハンス・グラムによって考案されたグラム染色により、紺青色あるいは紫色に染色される細菌の総称です。外膜を持たず、厚いペプチドグリカン層が存在するという特徴があります。比較的オゾンへの耐性が高い場合が多いです。特に芽胞菌類はオゾンや他の殺菌法に対する高い耐性を持ちます。
ブドウ球菌、レンサ球菌、炭疽菌、セレウス菌、ボツリヌス菌、ウィルシュ菌、破傷風菌、乳酸桿菌などが該当します。
芽胞菌
芽胞とは植物でいう「種子」に相当する菌の形態です。堅い殻を持ち、加熱・乾燥・紫外線・化学薬品などに対し強い耐性を示します。この芽胞を形成することで厳しい環境に耐えうるのが「芽胞形成菌(芽胞菌)」という細菌です。
芽胞形成菌は自然界に広く分布し、洗浄・調理・加熱殺菌などの工程を経て食品を製造しても、食品の変敗や食中毒の原因となることがあります。オゾンに対しても高い耐性を持っており、滅菌効果の指標にもなっています。
昆虫忌避
害虫の侵入や摂食、産卵などの行動を制御し、被害を防ぐ方法を忌避法といいます。
生物がある種の化学物質に対して方向性の反応を示すことを走化性と呼びますが、刺激物質や匂いから遠ざかろうとするのが負の走化性(忌避)です。これを利用して害虫を防除する薬剤が昆虫忌避剤です。一例としては、ハーブや、虫よけ剤による飛来の防止や、吸血防止があります。
オゾンによる昆虫忌避は、昆虫の出すフェロモンを酸化分解することで行います。一部の昆虫は、フェロモンを出すことで周りの仲間を集める習性があります。オゾンによってこのフェロモンを分解することで、昆虫が集まることを防止できます。
参考文献について
参考文献については下記ページをご参照ください。おすすめの書籍としてご紹介しております。